豊前房の店内は、生花がセンスよく飾られた、2人掛けの白いテーブルが8席とカウンター席が配され、ボサノバが適度なボリュームで流れている。このお洒落な雰囲気で、うどんと美味しいエスプレッソが同時に楽しめるというコンセプトが面白い。
この店のうどんは九州風で、出汁は、九州佐伯産のいりこと北海道日高産の昆布だけで仕上げられている。化学調味料は一切使用されていない。先ずは、この店で人気ナンバーワンの「豊前房うどん」を味わって欲しい。おぼろ昆布、下関産のさつまあげ、京都南禅寺のあげがトッピングされた暖かいうどんは、絶品だ。適度にコシのある手延べうどんは、切り口の角がなく、非常に滑らかな食感だ。出汁とおぼろ昆布のねばりが麺にバランスよく絡まっているのが最高である。これは、中毒症状を起こす味だ。
ちょっとスパイシーな風味をプラスしたいのならば、京都南禅寺の黒七味を足してみるといい。更にボリュームのあるうどんが好みなら、「ピリカラ肉うどん」がお勧めだ。松坂牛、ピーマン、玉ねぎをガーリック風味でソテーして、暖かいうどんにトッピングしたこの一品は、ボリュームもたっぷりで、女性一人なら、この一品だけで、十分お腹一杯になってしまう量だ。冷たいうどんなら、梅肉と大根おろしが入った「梅おろしうどん」がイチオシだ。
この店が素晴らしいのは、うどんだけではない。板わさ、厚焼き玉子、地鶏の塩焼き等の一品メニューも同様に素晴らしい。特に厚焼き玉子の出来は、老舗の蕎麦・うどん屋にも十分比肩できるレベルだ。また、料理を供する器のセンスも抜群である。うどんの器は全て有田焼で、10種類以上ある焼酎は、美しい江戸切子のグラスで供される。デザートは杏仁どうふのみだが、エスプレッソとの相性は意外にいい。
店内は様々な年齢層の客で絶えず賑わっており、近隣のセレクトショップで働いているらしい、若い女の子や、男の子が1人メシを楽しんでいる脇で、50代くらいの女性のグループ4人がわいわいと食事している風景は、なかなか心和むものがある。うどん一品のプライスは、735円〜1365円、一品料理の値段は525円〜1785円。ディナーの予算は、ドリンクを抜いて、1人1600円もあれば十分だろう。ランチタイムは、11:45amから2:30pmで、うどん全品(値段はディナータイムよりもやや安め)にその日の炊き込みご飯がつく。平日の営業時間は、なんと深夜2時まで。この店目当てに中目黒に引っ越してくる人が居ても不思議ではない、都内でも随一の使い勝手のいい店だ。
場所は、中目黒駅から徒歩10分。山手通りを池尻大橋方面に直進。目黒東山一郵便局の角を左折。
岡部 光
by Hikaru Okabe