東京には、沢山のベルギービール・バーがあるが、アントワープセントラルほど大きい店舗は他に無いだろう。広々としたテラス席とダイニング・スペースがバー・スペースに併設されたこの店は、そのサイズも、活気に満ちた店内の雰囲気も、格式を感じさせる佇まいも、まさにヨーロッパのカフェを感じさせる。また、他のベルギービール・バーがマニアックなビール愛好家をターゲットにして成功していることに対して、この店は、会社帰りに気軽にビールを飲みに立ち寄る、ごく普通の会社員のような人たちをターゲットにしているのも大きな違いだ。
平日の営業終了時間は、なんと午前4時。これには驚かされたが、さらに驚かされたのが、この店の料理のレベルの高さだ。日替わりのお勧めメニュー(大概この手のメニューがある店はいい)から、この日我々が選んだ料理は、鹿肉の網焼き イチジクとワイン・ソース添え。柔らかい食感で、味付けも最高であった。付け合せに美しく添えられた、絶妙にグリルされたポテト、ニンニク、カリフラワー、仄かに炭火の香りが感じられる芽キャベツも抜群の組み合わせだ。
ベルギーの伝統的家庭料理である、"stoemp au larde" という一品もこの店では食べることができる。これは、たっぷりの煮込んだバラ肉に、根菜類をまぶしたマッシュポテトを添えたものだ。もちろん、ベルギーの定番料理である、ムール貝(好みの調理法がセレクトできる)とフライドポテトもある。フライドポテトには、この店のオリジナルのサムライソース(わさびフレーバーのマヨネーズ)をトライしてみる。なかなか、面白いテイストではあるが、やはり我々はオーソドックスなマヨネーズの方が美味しく感じられた。フードメニューは、全体的に気取りのない品々で構成されていて、ポーションは多めだ。
ビールは、約30種の様々な個性のブランドが楽しめる。ベルギービールにあまり馴染みのない人でも、気後れしてしまうほどのブランド数ではないだろう。セレクションが限られているということは、絶えず鮮度のいいビールが飲めることでもあるのだ。ディナーメニューは、9:30pm頃までオーダー可能だが、バラエティ豊かなバー・メニューは3:00amがラストオーダーだ。ドリンク代を含めて、一人3000円から5000円の予算で、十分満足できるはずだ。
アントワープセントラルは、更に数店舗が開店準備中であるらしい。ベルギービールは、まさに今、東京のフードシーンでメインストリームに躍り出ようとしている。他の支店もこの店と同レベルのフードとビールを楽しい雰囲気で供するならば、恐らく人気を博すことだろう。お気に入りのベルギービールが飲める場所が、もっと都内に増えることを我々は心待ちにしている。
by Robb Satterwhite