クロアチアは、アドリア海をはさんでイタリアの向かい側にあります。イタリアほど広くないけれど、海岸線が長く、魚のグリル、スキャンピ、ムール貝、イカなどシーフードをふんだんに使った地中海料理や、ヤギのチーズ、ハムやオリーブの料理が楽しめます。同時に、クロアチア北東部では、ハンガリーとも長い国境を接していて、オーストリアにも近く、東ヨーロッパからも大きな影響を受けています。Dobroは東京ではあまり知られていないおいしいクロアチア料理を楽しめる日本橋の隠れ家的スポットです。
円形劇場を思わせる大理石の階段を数段降りると、シンプルで上品な大理石の壁に囲まれた店内になります。入り口にはアドリア海の漁村を描いた大型の壁画、周りの壁面にはアンティークな彫り物や絵画が飾られています。この店はレストランになる前は、高価なジュエリー・ブティックか何かだったようにみえます。店内には10脚ほどのテーブルがゆったりとしたスペースで置かれています。客層は着飾ったカップルと勤め帰りのグループが入り混ざっていますが、いくぶんよそいきの雰囲気が満ちています。
それはともかく、この店の一番の魅力は料理で、日本ではかなりユニークな料理といえます。メイン料理は、骨付き鴨肉と豆のグリル、ウサギのグラッシュ、海老と魚介のダルマティア風ブーザラなど、どれも特徴のある変わった味が楽しめます。たとえば、グラッシュは重たい田舎風シチューを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、スパイスの使い方が巧妙で、肉は柔らかく風味があり、アスパラガス、カブ、その他の野菜は歯ごたえがあってとても美味です。
クロアチア風ラザニアやリゾット、パスタにはイタリア料理の影響が感じられます。数種類のリゾットには、トリュフやホタテを使ったものもあり、パスタには鹿肉の煮込みパスタなどの野心作もあります。最近のシェフのスペシャル・リゾットは新鮮な季節のキノコ、トマト、最高においしいエビで作られていました。アラカルト料理の一皿は、分けて食べられるくらいたっぷりありますが、もしものすごく食欲があれば、一人でも食べられるくらいの分量です。
その他、挽きたてコショウのたっぷりかかった自家製ポークソーセージ、フォアグラのソテー 赤ワインとドライフルーツのソース、鮮魚のカルパッチョ マンゴーとラズベリーのソース、塩漬にしたキャベツにポークとお米を詰めたクロアチア伝統のロールキャベツなどがあります。自家製のパンは、思わず目を見張るほどのおいしさです。カリッとした皮がついて身のしまったパンですが噛みやすく、肉のペーストやチーズと大豆のパテなど塩味のスプレッドが付いています。
クロアチア・ワインは濃厚ですが飲みやすく、料理によく合うので、トライしてみても面白いですよ。4500円のオーストラリアン・シラーズもいいかもしれません。アラカルトのほか、コースディナー(4200円から10,000円)やランチ(1600円から4800円)もあります。この店がオープンした2003年後半に厨房を切り盛りしていたクロアチア人のシェフ達はヨーロッパに帰国しましたが、日本人の厨房スタッフは彼らの腕前をよく習得しており、料理は今も安心できる確実な味です。
by Robb Satterwhite