ル・プティ・トノーはパリの裏通りから抜け出てきたようなこぢんまりした気さくなビストロです。料理はシンプルなコンセプトに基づいた絶品で、ワインリストには厳選されたワインが種類豊富にリーズナブルな価格で並んでいます。ほかに有名レストランがあるわけでもないこの気取りのないビジネス街、九段下の中心部にこんなワインリストをもつ店があるのは驚きです。
なんなら、ル・プティ・トノーをワインバーと思ってもいいかもしれません。グラス注文できるワインが20種類以上、ボトル注文のワインがほかに数十種類用意されています。リストのほとんどは、東京のレストランではあまりお目にかからないフランス南西部ルーション地方(ラングドッグの隣)のワインです。メニューにはそれぞれのワインの特徴が詳しく書かれていますが、フレンドリーなウェイターに尋ねても料理に合ったおすすめワインを教えてくれます。この店ではワインを直輸入しているため、グラスが平均500円から800円、ほとんどのボトルは8000円以下と、価格が抑え目になっています。
料理メニューは、品数は多くありませんが、鴨のもも肉のコンフィ、ソーセージ入りレンティルスープ、そして本日のリゾット、スパゲティ、自家製ラビオリなどのシンプルなビストロ料理が並んでいます。鴨のもも肉のコンフィは外側がパリッとして中がしっとりと完ぺきな仕上がりで、付け合わせのフライドポテトも口の中で溶けそうなくらいソフトな一級品です。ラムと白インゲンの田舎風煮込みも絶品で、コート・ドゥ・ルーション・ワインともよく合います。エンダイブ・サラダのようなシンプルな料理も、ハーブやペパーコーン、カリっとしたベーコンや上質のクルミなどがちりばめられて見た目にもきれいに仕上がっています。
今日はちょっと高級ムードという方には、フィリップ・バットンのスペシャルコースがおすすめです。(彼の名前は代官山のル・プティ・ブドンで覚えている方もいるかもしれません。彼は2001年後半にこの店の運営を任される以前はル・プティ・ブドンの厨房を任されていました。)このスペシャルコースには、シェフ・バットンの特別料理5品とデザートでわずか6000円です。そのほか、2品コース(前菜とメインディッシュ)が3200円、4品コースが4300円で、シェフのスペシャルを含む全品が一品料理として提供されています。食後には、カルバドス、ブランディ、蒸留酒が用意されています。チーズは、品数は少ないながら、一級品です。
店内はテーブルの間隔が狭いビストロスタイル(ビジネス接待向きの店ではありません)で、予約をおすすめします。
朝は8時から(東京では珍しい)卵とベーコン、シリアル、クロワッサン、ヨーグルト、生ジュースの朝食サービスを提供しています。
(九段下駅から北、ホテルグランドパレス方面に向かって進み、ホテル向かいのローソンの手前で右に曲がると左手にある。)
by Bjorn Katz